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2024年06月15日

下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(平成15 年公正取引委員会事務総長通達第18 号・「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正について

1 解説
令和5年11月29日公正取引委員会が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を受け下請法4条1項第5号の買いたたきについて、下請法運用基準が改正されました。従前は下線部のア、イの例示部分がなく単に「従前の給付に係る単価で計算された対価を通常の対価」と規定していました。
労務費価格転嫁を防止するためより具体的に規定することで、下請事業者の予測可能性を高め、実効的に買いたたきに伴う労務管理費の価格転嫁を防止する趣旨です。下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正(案)に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.1考え方に公正取引委員会の意図が明確にあらわれた回答がありましたので併せて御参照ください。ポイントとしては下請事業者との価格交渉については公表資料が基準となること、その公表資料などを踏まえて上で、下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法、差別的であるかどうか等の決定内容、通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断されることかと思います。親事業者側は今回の改正を踏まえて下請事業者と価格交渉をしないと法的リスクを負うことになります。また、下請事業者は改正後の規則をしっかりと理解して価格交渉に臨むことが重要です。
2 改正後規則
「5 買いたたき
⑴ 法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとは、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」である。「通常支払われる対価」とは、当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(以下「通常の対価」という。)をいう。ただし、通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については、例えば、当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には、次の額を「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」として取り扱う。
ア 従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い下請代
金の額
イ 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコス
ト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の
妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられ
る公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下
請代金の額
買いたたきに該当するか否かは、下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法、差別的であるかどうか等の決定内容、通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断する。」(下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(平成15 年公正取引委員会事務総長通達第18 号・「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正 新旧対照表改正後参照)
3 参考
「今回の下請法運用基準改正案は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(令和 5 年 11 月 29 日)」を踏まえて、通常支払われる対価を把握することができないか又は困難である給付について、下請法第 4 条第 1 項第5 号でいう「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」に当たる事例を例示することで、特にコストが著しく上昇している状況における下請代金の据置きについての解釈・考え方を更に明確にしたものであり、「著しく低い」という文言に限って明確化を図るものではないことから、原案のとおりとさせていただきます。なお、個別のケースにおいて、下請法上の買いたたきに該当するか否かは、「下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法、差別的であるかどうか等の決定内容、通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断(下請法運用基準第 4 の 5(1))」されることとなります」(「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正(案)に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.1考え方参照)