岡山弁護士会所属
岡山富田町のかかりつけ法律事務所
肥田弘昭法律事務所

お知らせ

一覧に戻る

2024年06月08日

下請法(下請代金支払遅延等防止法)の概要について

1 下請法の目的(1条)
 「下請取引の公正」「下請事業者の利益保護」の観点から下記の点が
 独占禁止法と異なる。
①  下請業者の不利益の未然防止
下請業者に発注書面交付義務(3条)・下請取引に係る書類・作成保存義務(5条)
② 下請業者の立証責任軽減による迅速な下請業者の不利益排除制度
親事業を定義(2条以下)し、支払期日を法定(2条の2)し、支払遅延した場合、遅延利息の支払義務(4条の2)を課し、かつ、下請業者の帰責性のない受領拒否の禁止(4条第1項1号)、下請代金減額禁止(4条1項3号)、返品禁止(4条1項4号)、買い叩き禁止(同5号)、購入・利用強制禁止(同6号)、報復措置の禁止(同7号)、有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(4条2項第1号)、割引困難な手形の交付の禁止(同2号)、不当な経済上の利益の提供要請の禁止(同3号)、不当な給付内容の変更・やり直し禁止(同4号)
③ 公正取引委員会の調査権限の強化により違反行為発見容易
独占禁止法47条1項「事件」を要件とするところ下請法9条は「事件」要件はなく、公正取引委員会は調査・検査(9条)できること、違反行為に対して原状回復義務を勧告する(7条)こと、勧告に従えば独占禁止法の適用を除外する(8条)
④ 中小企業庁長官による調査権限
中小企業庁長官に対し調査権限(9条2項)と公正取引委員会への措置請求権付与(6条)
2 製造委託(2条1項)
(1) 製造委託第1類型「事業者が業として行う販売の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」
(2) 製造委託第2類型「事業者が業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の政治王を他の事業者に委託すること」
(3) 製造委託第3類型「事業者が業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること」
(4) 製造委託第4類型「事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」
3 修理委託(2条2項)
(1) 修理委託第1類型「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
(2) 修理委託第2類型「事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること」
4 情報成果物作成委託(2条3項)
(1) 情報成果物作成委託第1類型「事業者が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
(2) 情報成果物作成委託第2類型「事業者が業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部の他の事業者に委託すること」
(3) 情報成果物作成委託第3類型「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
5 役務提供委託(2条4項)
(1) 役務提供委託「事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」(←自社の役務の提供は除外されている点でフリーランス新法と異なる)
(2) 建設業法2条2項 建設業を営む者が業として請け負う建設工事は建設業法により対応するので除外
6 製造委託など(2条5項)
 「製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託」
7 情報成果物(2条6項)
(1) プログラム
(2) 映画、放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成されるもの
(3) 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
(4) 前(1)ないし(3)に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの
8 親事業者(2条7項)下請事業者(同8項)
(1) 製造委託・修理委託・政令で定める業種(ソフトウェア業・運輸業・倉庫業・情報処理サービス業)
① 親事業者(資本金規模3億円超の企業)→下請事業者(個人・資本金規模3億円以下の企業)
② 親事業者(同1千万円超3億円以下企業)→下請事業者(個人・同1千万円以下企業)
(2) 情報成果物作成委託(政令で定める業種を除く)・役務提供委託
① 親事業者(資本金規模5千万円超の企業)→下請事業者(個人・資本金規模5千円以下の企業)
② 親事業者(同1千万円超5千万円以下企業)→下請事業者(個人・同1千万円以下の企業)
 9 トンネル会社規制(2条9項)①ないし③の要件を充たした場合は資本規模にかかわらず下請法の規制を受ける。
① 企業が子会社の取引先に対し、直接製造委託等をすれば「親事業者」に該当し、その委託先事業者が「下請事業者」に該当する場合
② 子会社が親企業から委託された製造委託等の全部又は相当部分を他の事業者に再委託する場合
③ 子会社が、資本規模1000万円を超える親企業から役員の任免、業務の執行または存立について支配を受けている場合
 10 下請代金(2条10項)「親事業者が製造委託等をした場合に下請事業者の給付(役務提供委託をした場合にあつては、役務の提供。以下同じ。)に対し支払うべき代金をいう。
11 義務
(1) 下請代金の支払期日(2条の2)
(2) 書面の交付など(3条)
 12 禁止事項
(1) 受領拒否の禁止(4条1項1号)
(2) 支払遅延の禁止(4条1項2号)
(3) 下請代金の減額禁止(4条1項3号)
(4) 返品の禁止(4条1項4号)
(5) 買い叩きの禁止(4条1項5号)
(6) 物の購入強制又は役務の利用強制の禁止(4条1項6号)
(7) 報復措置の禁止(4条1項7号)
(8) 有償支給原材料等代金の早期決済の禁止(4条2項1号)
(9) 割引困難な手形交付の禁止(4条2項2号)
(10) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(4条2項3号)
(11) 不当なやり直し等の禁止(4条2項4号)
(12) 遅延利息(4条の2)注意)規則で遅延利息は14.6%
(13) 書類等の作成及び保存(5条)
 13 中小企業庁長官の請求(6条)
(1) 強制調査権限(9条の2)
(2) 公正取引委員会に対する措置請求(6条)
 14 勧告*違反事業者に対する措置(7条)
 15 独占禁止法と下請法の執行関係(8条)
(1) 公正取引委員会は通常下請法を適用する。
(2) 勧告に従う場合、独占禁止法は適用しない。
 16 報告及び検査(9条)
 17 罰則(10条・11条)両罰規定(12条)
18 下請法違反の私法上の効力
下請法違反の行為は、同法の趣旨に照らして不当性の強い場合は公序良俗違反として無効となるが、そうでない場合は、下請法に抵触するということだけで下請法違反の合意が無効とならない(最二小判平成3.7.19)。