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2024年06月02日

共同親権(民法819条等)に関する民法改正の概要について

1 施行日
令和6年5月17日成立公布され施行は公布から2年以内です。
2 共同親権(改正民法819条)の概要は次の通りです。
①  協議離婚の際は、父母の協議により父母双方又は一方を親権者と指定することができる。
②  協議が調わない場合、裁判所は、子の利益の観点から、父母双方又は一方を親権者と指定する。
③  父母双方を親権者とすることで子の利益を害する場合には単独親権としなければならない。
④ 親権者変更に当たって協議の経過を考慮する。
3 親権行使(改正民法766条、824条の3等)
① 婚姻中も含む。
② 原則は親権の共同行使
③ 例外は、(ア)子の利益のため急迫の事情があるとき(イ)監護及び教育に関する日常の行為
④ 父母の意見が対立した場合、裁判所で判断する手続の新設
4 離婚する場合の子の監護について(改正民法766条、824条の3等)
① 子の監護をすべき者、子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担、その他を定める。
② 審判による父母以外の親族と子の交流を定めることができる(改正民法766条の2)
審判の請求者についても、父母以外にこの直系尊属及び兄弟姉妹以外の者にあっては、過去に当該子を監護していた者に限るものの父母以外の子の親族も請求ができる。
5 子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例(改正民法766条の3)として法定養育費制度を導入した。それに伴い養育費の履行確保に向けた制度を導入した。
① 養育費債権に先取特権を付与(改正民法306条、308条の2)により債務名義(養育費の調停合意や審判がない場合等)なくとも差押可能となる。
② 執行手続の負担軽減策や収入情報開示命令などの裁判手続の規律を整備
(民事執行法167条の17、人事訴訟法34条の3、家事手続法152条の2等)
6 弁護士の視点
(1) 婚姻中の親権行使の例外で「教育に関する日常の行為」とある。子の転校手続が「教育に関する日常の行為」に含まれるのか不明確(2024年6月2日時点)であり今後の紛争になる可能性がある。教育現場の判断が大変となり学校が法的紛争に巻き込まれる危険がある。別居親が子と共に別居した場合、転校手続なども別居親で事実上できていたので実務に与える影響は大きいと考える。
(2) 父母以外の親族の面会交流が認められた点は画期的だと考える。面会交流調停において同居親が別居親以外に頑なに会わせたくないとして揉めるケースが担当した事件でも多かったが、紛争の解決の一助になるかと思う。
(3) 法定養育費制度の導入と債務名義なくとも差押え可能になり、改正民事執行法などの改正により他の債権と比較すると手続が簡便になった点は大きい。
(4) 令和6年5月17日公布から2年以内の施行であることから施行日を注視する必要がある。施行されれば実務の様相が良くも悪くも一変する可能性がある。ただ、懸念するのは家庭裁判所の負担が過大になり、手続が入らないとの事態が生じれば、改正されたとしても権利実現に時間がかかることになりかねない。家庭裁判所の人的物的な拡充が必要である。