2024年05月26日
携帯電話販売代理店の評価制度と優越的地位の濫用について
1 評価制度について
「MNO3社(注;代表的な携帯電話会社)は,自社の定める評価基準によって,各販売代理店を一定期間ごとに評価し,当該評価に応じて,MNO が販売代理店に支払う手数料のランク等を決定する評価制度を設けている。また,MNO3社の一部においては,評価制度において,最低評価を複数回受け続け,その間に改善のみられない店舗との契約を解除する仕組みが存在している。」(〔携帯電話市場における競争政策上の課題について〕〔令和3年度調査〕令和3年6月公正取引委員会49頁)との点から、販売代理店に対してランクなどを決定する評価制度により手数料など経済的利益を付与したり、減額したりする制度とご理解ください。これにより販売代理店をコントロールすることが可能となる点に販売元のメリットがあるかと思います。
2 評価制度と優越的地位の濫用について
(1) 公正取引委員会は〔携帯電話市場における競争政策上の課題について〕〔令和3年度調査〕令和3年6月公正取引委員会52頁で次のとおり考えを述べていますので指針として重要です。
(2)「販売代理店のMNO に対する取引依存度や取引先であるMNO の変更可能性に加え,MNO3社の市場における地位等を総合的に考慮すると,MNO3社の取引上の地位が販売代理店に対し優越している場合があると考えられる。」とのことから、優越的地位であることは令和3年度調査の結果公正取引委員会が認定しています。すなわち、販売代理店にとって一方的に不利に評価制度を変更されることは優越的地位の濫用に該当する可能性が生じると公正取引委員会が見解を表明していることになります。
(3)そして「MNO の取引上の地位が販売代理店に対し優越している場合に,その地位を利用して,販売代理店によるサービスを的確に実施するために必要な限度を超えて,販売代理店と契約条件に係る交渉を十分に行うことなく契約内容を一方的に変更すること等によって,販売代理店に対し不利益を与える場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある(優越的地位の濫用)。」として私は公正取引委員会が評価制度についての事実上に評価制度に対するガイドラインとしての指針を示していると考えます。したがって、販売代理店、販売元にとって重要な視点です。
(4)「MNO の行為が,独占禁止法上問題となるか否かは,個別具体的に判断されることとなるが,契約内容の変更に関し,例えば,販売代理店と十分に協議することなく,一方的に,契約件数等の販売目標の引上げ,評価ランク・評価方法の不利益変更等を行っていないかといった点を考慮することとなる。」としていますので、販売代理店にとって協議の有無、協議期間などで一方的な不利益変更等を行っていないかの視点がでています。したがって、評価制度の協議過程(相手担当者からのメールの保存、協議したのであれば議事録、協議がないのであれば協議の申入れ、協議期間が短いのであればその期間の延長など申入れなど)を証拠化することを心がけると私は良いと思います。
(5)「MNO は,独占禁止法違反行為を未然に防止する観点から,前記考慮事項に留意した上で,契約内容の変更を行う理由等について,根拠を示して十分な説明を行うとともに,販売代理店から意見が寄せられた場合には,当該意見をできる限り考慮し,また,変更までの期間を十分設けることが望ましい。」とあります。そこで、販売代理店からすると、①根拠を示されなかった場合、その根拠を示すように求めること、②積極的に意見を言うこと、③変更までの期間が短期間であれば期間の延長を求めること等交渉において意識すると良いです。当然ながら、①ないし③について証拠化(メール等での申出等)することをお勧めします。
(6)「消費者によっては必要としない大容量プラン等の販売契約数を評価制度の評価基準において過度に重点的な項目として位置付けることは,販売代理店が当該プラン等を過度に勧誘してしまうおそれがあり,消費者が最適な料金プランを選びやすい競争環境を整備するという観点から望ましくない。」と消費者保護の観点から評価制度の内容を指摘しています。消費者に無理な販売をしていれば販売代理店の評判も悪くなり長い目でみると営業に支障をきたすこともあるかと思います。販売代理店からすると売れ筋でない商品役務の提供や過剰なサービスを付加する商品の販売が評価制度に盛り込まれた場合は、前記のとおり販売元と協議するのが良いかと思います。
他方、販売元は、公正取引委員会の評価制度に対する考え方を受け評価制度について過度に販売代理店に不利益にならないようにしないと思わぬ法的リスクを負うことになるかと思います。
構造的には、例えば保険会社の販売代理店など同じ構造ですので、販売代理店の評価制度を取り入れている業界は、公正取引委員会の前記見解について留意する必要があるかと私は思います。