2019年05月26日
相続法改正~配偶者居住権消滅の効果~
問)私は、遺言で、妻に配偶者居住権を遺贈しようと考えていますが、配偶者居住権が消滅した場合の効果を教えてください。
答)
1 民法1035条1項
配偶者は、原則として、所有者に居住建物を返還しなければなりません(民法1035条1項)。但し、配偶者が、その居住建物について共有持分を有している時は、返還義務はありません。今後は、一般の共有法理により法律関係が判断されます。
2 返還に伴う義務及び権利について
配偶者は、相続開始後、配偶者が居住建物に附属させた物を収去する権利及び義務を有します。
但し、分離ができない物、分離に過分の費用を要する物は、収去義務を負いません(民法1035条2項,民法599条1項,2項)。
3 原状回復義務
配偶者は、原則として、相続開始後に居住建物に生じた損傷を原状に回復する義務があります。但し、配偶者に帰責事由がない損傷については原状回復義務を負いません(民法1035条2項,民法621条)。
4 損害賠償請求等の期間制限
配偶者の用法違反による生じた損害賠償,配偶者が支出した費用の償還は、居住建物の返還から1年以内に行使される必要があります(民法1036条,民法600条1項)。除斥期間とされています。
損害賠償請求については、返還後、1年間経過するまでは時効が完成しませんので注意が必要です(民法1036条,民法600条2項)。
5 原状回復義務等の承継
上記の権利義務は、配偶者の相続人に相続されます。