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2019年05月19日

相続~配偶者居住権の消滅事由について~

問い) 私は、妻に配偶者居住権を贈与しようと考えています。配偶者居住権は、どのような場合に消滅しますか。
(注意)配偶者短期居住権(民法1037条)の説明ではありません。
答え)
1 配偶者居住権の消滅事由
  配偶者居住権は、配偶者が亡くなる(終身)までが原則の存続期間です
ので、亡くなることにより消滅します。
但し、①遺産分割協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は、②遺産分割審判のとき、別段の定めがある場合は、その定めによります(1030条但し書き)。更新はできません。この場合、存続期間の満了を待たずに配偶者が死亡した場合は、死亡時に消滅します(1030条,1036条で民法597条1項,3項を準用)。
また、居住建物が滅失した場合、配偶者居住権は消滅します(1036条,616条の2を準用)。
なお、配偶者居住権に優先する抵当権などが実行された場合は消滅します。
加えて、用法遵守義務違反等がある場合は、居住建物所有者に消滅請求権が発生します(1032条1項,3項,4項)。
2 混同の例外
  居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合でも、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない」(1028条2項)として混同による消滅の例外を定めています。これは、配偶者が、居住建物の共有持分を取得したために、共有物分割請求などにより居住権を失うことを防止するためです。
3 合意,権利放棄(免除)による消滅
  配偶者と建物所有者との合意(1036条,613条3項準用)、権利放棄(519条)により消滅します。
4 施行期日
 配偶者居住権の施行日は、2020年4月1日です。
5 経過措置
 配偶者居住権(民法1028条)は、2020年4月1日以後に開始
された相続にのみ適用されます。
 注意点は、遺言で、配偶者居住権(民法1028条)を配偶者に遺贈(民法1028条1項2号)した場合も、その遺言は、2020年4月1日以降に作成されたことを必要とします。