2019年04月20日
~相続~家族信託とは~
問)家族信託とは何ですか。
答) 1 信託の仕組み
まず、信託とは、自分の財産を信頼できる人(法人を含む)に預けて、その預ける目的にしたがって管理してもらうことです。
信託において、財産を預ける人を委託者といいます。そして、財産を預かる人を受託者といいます。
さらに、預けられた財産から利益を得る人を受益者と言います。
そして、預けられた財産を信託財産と言います。
信託は、委託者が所有していた財産(信託財産)の管理・運用・処分権限を受託者に移行し、信託財産から発生する利益などを受け取る権利(受益権)を受益者が保有する仕組みです。
家族信託とは、一般に受託者が業として信託を受託しない民事信託を言います(なお、「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です)。
2 信託の方法
(1) 信託は、信託契約、遺言、信託宣言の3つの方法により行います。
(2) 信託契約は、委託者と受託者間の契約により成立し受益者の合意は不要です。
(2) 遺言による信託は、遺言により受託者を指定する方法です。
(3) 信託宣言による信託は、委託者の単独の意思表示です。委託者と受託者が同一の場合です。但し、書面でされることが必要で(信託法3条3号)、公正証書の作成、受益者とされた者に対する確定日付の通知が、効力発生のための要件です(同法4条3項)。
3 (家族)信託の機能
(1) 信託財産に関する権限を受託者に移行させる機能
(2) 信託財産に対する所有権を受益権に変化させる機能
加えて、委託者の思いを委託者の死後も継続することができる点も指摘されることがあります。
4 家族信託の効果
(1) 凍結防止効果
所有者が認知症などになり所有権を有効に処分できなくなった場合に、成年後見制度と比較して、売却権限などをあらかじめ信託している場合は、スムーズに売却できるなど、財産の凍結を防止できる効果があります。
(2) 財産の散逸などの防止効果
受託者に権限が集中していることにより、例えば、不動産の相続による共有などを防止できます。
(3) 相続手続の円滑化に資する効果
被相続人の預金の凍結を防ぎます。なぜなら、信託口座として、受託者名義になっているからです。受益者の変更により、相続人の資金の需要に対応できます。
(4) 意思尊重効果
受益者連続型信託契約(信託法91条)などの利用により、自己の財産の利用に関する意思を自分の死後も継続できます。
(5) 節税効果
高額な収益物件を所有している場合、その物件自体について、相続税や生前贈与税がかなりかかります。信託することで、元本受益権と収益受益権に分け、その元本受益権のみを相続人に生前贈与するなどにより、通常の場合と比較して、節税できる可能性があります。