2019年04月12日
相続法改正~遺留分侵害額の算定~
Q)遺留分が侵害された場合は、どのような計算に基づき算定されますか。
私は、兄Aがいます。父はすでになく、母のみでした。この度、母が亡くなりましたが、遺言で、兄Aにすべて相続させる旨記載がありました。
兄Aは、5年前に結婚し、母から結婚祝いとして、200万円の贈与を受けております。
母が亡くなった時点での母の相続財産の額は、1000万円でした。
私は特に母から何も貰っていません。母に借金もありませんでした。
私の遺留分を教えてください。
A)遺留分侵害額は、相続法改正前には条文上明記されていませんでした。改正相続法では、遺留分を算定するための財産の価額として、遺留分の算定についてその計算方法が明記されました(民法1043条)。
1 遺留分の算定
①遺留分を算定するための財産の価額を求めます。
遺留分を算定するための財産の価額とは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から相続債務の全額を控除して算定します。
加算対象となる贈与は、受贈者が相続人以外の者である場合は相続開始前1年、受贈者が相続人の場合は相続開始前10年です(民法1044条1項・3項)。但し、相続人に対しての贈与は、特別受益であることを明らかにするため、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与に限定されています。
②次に、①の価額に1042条各項所定の遺留分の割合を乗じることで、遺留分の額となります。
直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
それ以外の場合 2分の1
なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。
また、相続人が数人ある場合は、民法900条及び901条の規定により算定した各自の相続分を乗じた割合になります。
③ 遺留分侵害額については次の通りです。
①の価額×②の割合-(遺留分権利者が受けた遺贈又は特別受益の額+遺留分権利者が相続によって取得すべき財産の額)+(遺留分権利者が承継する相続債務の額(899条))
なお、寄与分は考慮されません(1046条2項2号で904条の2が除外)。これは、寄与分の有無及び額は相続開始時点では確定していないからです。
2 あなたの遺留分について
まず、①から、相続開始時の1000万円と5年前のAの贈与200万円を足すので、遺留分を算定するための財産の価額は、1200万円です。
次に、子は、直系卑属ですので、2分の1が遺留分の割合になりますが、兄と弟ですので、さらに2分の1(法定相続分・頭割り二なります)となります。
1200万円×2分の1×2分の1=300万円
そして、あなたは、相続により取得すべき額や特別受益もありませんので、控除されません。借金もお母さんにありませんので、0円×2分の1=0です。
すなわち、あなたの遺留分は、300万円となります。