2019年02月10日
税法~更正の請求とは?~
問) 私は、確定申告書を提出した後、税額の計算の過誤を発見しました。この場合は、税務署に聞いたところ、更正の請求をしてくださいと言われました。更正の請求とはどのような制度ですか。
答)
1 更正の請求(国税通則法23条1項、地方税法20条の9の3第1項)
(1) 更正の請求とは、納税申告書を提出後に、税額の計算が法律の規定に従ってなかったこと、又は、計算誤りがあったことにより、税額を過大に申告していた等が判明した場合、納税者が、税務署長に対し、その更正を請求できる制度です。具体的には、①納付すべき税額が過大であること、②純損失等の金額が過少であること、④還付金の額が過少であること、⑤還付金の額の記載がないことです。
(2) 更正の請求により、税務署長の更正処分があれば、はじめて税額が変更できます。
これは、更正の請求のみで税額が変更すると実質的に納期限を延長したのと同じ効果となり申告納税制度の理念に反すること、手続の安定性を害することを防止するためです。
そのため、税額が過大であったからといって、更正の請求をせずに、訴訟により直接、不当利得返還請求等の他の救済手段は原則として許されないと考えられています(最判昭和53年3月16日)。
したがって、更正の請求が認められない場合などの更正の請求に対する通知処分を受けて、その処分に対する取消訴訟や不服申立により、裁判制度等で救済を求めることになります。
(3) 更正の請求ができる期限は、原則5年(国税通則法23条1項、相続税法32条2項など。但し、法人税に係る申告または更正が損失の場合、10年など例外あり)であり、後述の一定の事由があれば、その事由が生じた日から一定の期間内であれば、更正の請求ができます。
2 後発的事由に基づく更正の請求(国税通則法23条2項)
(1) 前述の更正の請求ができる期限を経過した場合でも、次の後発的事由がある場合は、更正の請求ができます。
① 課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実が判決等により異なる事となったとき(国税通則法23条2項1号)
② 所得や課税物件等の帰属者が異なるとして他の者に更正や決定が行われたとき(国税通則法23条2項2号)
③ 事実に含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取消されたとき(国税通則法施行令6条1項1号)
④ 事実に係る契約が解除権の行使によって解除され、もしくは契約の成立後に生じたやむを得ない事情によって解除され、または取消されたとき(国税通則法施行令6条1項2号)
⑤ 帳簿書類の押収その他のやむを得ない事情により、課税標準等又は税額などを計算することができなかった場合に、その後、その事情が消滅したとき(国税通則法施行令6条1項3号)
⑥ 租税条約に規定する相互協議により、課税標準等又は税額に関し、異なる内容の合意が行われたとき(国税通則法施行令6条1項4号、租税条約実施特例法7条1項、2項)
⑦ 通達に示されている法令の解釈などが、判決などに伴って変更され、変更後の解釈が公表されたことにより、課税標準等または税額等が異なる取扱いを受けることとなったことを知った時(国税通則法施行令6条1項5号)
(2) 但し、上記は、例外的な取扱いのため、その事由が生じた日の翌日から2月以内に後発的事由による更正の請求をする必要があります。 もっとも、国税通則法23条1項の期限内であれば、その期限内にできます(国税通則法23条2項)。
(3) なお、例えば、相続税法については、相続税固有の特則(相続税法30条1項など)あるように、個別税法における特則が定められていますので、注意が必要です。