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肥田弘昭法律事務所

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2019年01月26日

交通事故~交通事故損害賠償請求権と労災保険の関係について~

問)私は、会社の業務中に交通事故に遭い、6か月の負傷を負いました。過失割合は、6:4で、私が4でした。加害者も業務中であったようです。私は、自賠責保険で限度額120万円を受領しましたが、足りず労災保険を請求したいと考えています。労災保険は、私の過失が4割でも、満額支給されるのでしょうか。また、私が労災保険を受給した場合、労災保険と相手方に対する損害賠償請求権の関係はどうなるのでしょうか。

答)まず、労災保険の給付制限があるのは、労働者が負傷した原因となった事故を生じさせたことに労働者に重大な過失がある場合です(労災保険法第12条の2の2第2項)。そして、同法12条の2の2第1項前段の支給制限の取扱いについては、「事故発生の直接の原因となった行為が、法令(労働基準法・鉱山保安法・道路交通法など)上の危害防止に関する規定で罰則の付されているものに違反すると認められる場合について適用し、支給制限の対象となる保険給付は当該労働者の傷病に係る休業補償給付及び障害補償給付で、支給事由の存する間、保険給付のつど給付額の30%支給制限する(昭40・7・31基発906)とされています。ここで、重過失とは、少なくとも、労働者に大半の過失がある場合ですので、4割程度では重過失にあたりません。したがって、あなたの場合は、満額支給されます。
次に、労災保険と相手方に対する損害賠償請求権の関係についてです。
労災保険は、被害労働者の迅速な保護の観点から、加害者の損害賠償請求より先に給付を受けることができ、この場合、労災給付を行った政府は、被害労働者の有する損害賠償請求権を取得し加害者に損害賠償請求をすることになります(労災保険法12条の4)。したがって、加害者の損害賠償請求権とあなたが労災保険給付を受けた限度で損益相殺される関係にあります。
但し、損益相殺についても単純に損害賠償額と損益相殺されるわけでは
ありません。
例えば、労災保険法による休業補償給付及び傷病補償年金は、財産的損
害のうちの消極損害(逸失利益)のみに補填されます。
また、その給付された補償金が財産上の損害を上回る場合であっても、その差額を慰謝料から控除することはできません。すなわち、裁判例の傾向は、労災保険法の給付の目的に対応する損害項目に関して、損益相殺を認める傾向にあると言えます。