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2019年01月12日

相続~配偶者居住権とは?その概要について~

問い) 私は、妻と長年、私名義の家で暮らしています。私には前妻の子がおります。その子が、私が亡くなった後妻に対して、私の遺産である家を売って分けたいので出て行けと言ってくる可能性があります。ただ、私には家と家が建っている土地しかありませんので、遺言で妻に家と土地を相続させても子に遺留分減殺請求される可能性があります。妻と私との間に子はいませんので、妻も自分が亡くなるまでこの家に住めれば良いと言っています。昨今、法律改正があり、配偶者居住権が新設されたと聞いています。その概要を教えて頂けませんか。
(注意)配偶者短期居住権(民法1037条)の説明ではありません。
答え)
1 概要
配偶者居住権(民法1028条)は、相続開始の時、被相続人の住居(居住建物)に居住していた生存配偶者に、原則として、終身、その住居に無償で生活できる権利を確保する制度です。
2 要件
配偶者居住権を取得する要件は、①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は、②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき(1028条1項1号、2号)、ないし、③審判による配偶者居住権が認められた場合(1029条1号「共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき」2号「配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき。但し、1号の場合を除く」)です。但し、④被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては認められません(1028条1項但し書き)ので気をつけて下さい。
3 効果
 (1) 配偶者居住権は、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得します(1028条1項本文)。
 (2) 存続期間は、配偶者が亡くなるまです(終身)(1030条本文)。但し、①遺産分割協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は、②遺産分割審判のとき、別段の定めがある場合は、その定めによります(1030条但し書き)。
4 施行期日
 配偶者居住権の施行日は、2020年4月1日です。
5 経過措置
 配偶者居住権(民法1028条)は、2020年4月1日以後に開始された相続にのみ適用されます。
 注意点は、遺言で、配偶者居住権(民法1028条)を配偶者に遺贈(民法1028条1項2号)した場合も、その遺言は、2020年4月1日以降に作成されたことを必要とします。