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2019年01月06日

相続~遺産分割前の預貯金債権の行使について~

問い)私は、2人の息子と妻が居ますが、息子達は仲が悪いです。私が亡くなった後、私の預貯金は凍結されると聞きました。息子2人の仲が悪いので私の預貯金をすぐに遺産分割ができないかと思います。そうなると、私の葬儀費用を私の預貯金から妻が使用できない可能性があります。民法(相続法)が改正されて妻も一定額について、私が亡くなっても私の預貯金について手続をとれば引き出せると聞きました。詳しく改正の内容を教えて下さい。
答え)遺産の分割における預貯金債権の行使(民法909条の2)として、一定の限度で、遺産分割前に相続人が被相続人の預貯金債権を引き出せる(権利行使)ことになりました。
 具体的には、①各共同相続人は、②遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)を単独で行使できます。この権利を行使して取得した預貯金債権は、一部遺産分割としたとされます(同条後段)。なお、「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。」は、各債務者(金融機関)ごとに150万円が限度です(平成30年法務省令第29号)。
 また、施行日は、2019年7月1日からです。仮に施行日前に相続が生じていたとしても、施行日後は、909条の2により、預金債権の行使をすることができます(平成30法72改附5)。