2018年12月28日
交通事故~所有権留保特約付き自動車の売主の責任~
(問い)私は、所有権留保特約付きで、自動車をAに売り渡しました。その自動車でAは先月交通事故死亡事故を起こしてしまいました。その被害者の遺族の方が、自動車の名義が私であったことから、私に対して、損害賠償請求をしてきました。この場合、私は、損害賠償責任を負うことになりますか。
(答え)ご相談者様の相談のポイントは、所有権留保特約付きで自動車を売り渡し、これを買主に引き渡した売主は、割賦代金完済前に買主が引き起こした事故について、自賠法3条所定の運行供用者責任を負うかとの点にあります。
この点、所有権留保は、代金債権を確保する目的であることから、運行支配も運行利益も売主に帰属することはありません。したがって、原則として、あなたは、Aがその自動車で起こした交通事故に関して、損害賠償責任を負うことはありません。
最高裁昭和46年1月26日は、「所有権留保の特約を付して、自動車を代金月賦払いにより売り渡す者は、特段の事情のないかぎり販売代金債権の確保のためにだけ所有権留保するにすぎないものと解すべきであり、該自動車を買主に引き渡し、その使用に委ねたものである以上、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者ではなく、したがって、自動車損害賠償保障法3条にいう『自己のために自動車を運行の用に供する者』にあたらないというべきである」としています。
但し、上記の判例の特段の事情として、会社が自己の従業員やその他の者に会社の所有する車を所有権留保付きで売り渡し、買主は、会社から一定の便宜をはかってもらいながら、その車を使用して会社の指揮・監督の下でその業務を行う場合(最判昭和44・1・31等)など、いわば被貸与者が、名義者の企業を構成するような場合には、例外的に自賠法3条所定の運行供用者責任を負う場合もありますので、企業の経営者の方は、気をつけて下さい。