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肥田弘昭法律事務所

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2018年12月24日

独占禁止法~地域制限と拘束条件付取引~

Q 私は、ある大手メーカーですが、消費者の需要のある画期的な商品を開発しました。その商品は私の会社以外で製造していません。小売業者に責任とやる気を持たせるため等の理由から小売業者の販売地域を指定する内容の契約条項を販売契約に入れたいと考えています。法律上何か問題になりませんか。

A 販売地域制限の内容によっては次の理由で拘束条件付取引(法2条9項4号,一般条項12項)に該当し独占禁止法19条違反になる可能性があります。
拘束条件付取引とは、不当に相手方の事業活動を拘束し、その自由な事業活動を制約することをいいます。  
公正取引委員会はおおむね、「行為の対象となった商品・役務の価格が維持されるおそれがある場合」、又は「競争者の取引の機会が減少し、代替的な取引先を容易に見だすことができなくなるおそれがある場合」に事業者の行為が拘束条件付取引に該当するとして法の執行・運用を行っていと思われます(流通・取引慣行ガイドライン)。
そして、流通・取引慣行ガイドラインは、販売地域に関する制限を、①責任地域制(メーカーが流通業者に対して一定の地域を主たる責任地域として設定その当該地域内において積極的な販売活動を行う義務を課すもの)、②販売拠点制(店舗等の販売拠点の設置場所を一定地域内に限定したり販売拠点の設置場所を指定したりするもの)、③厳格な地域制限(メーカーが流通業者に対して一定の地域を割り当て地域外での販売を制限するもの)及び④地域外顧客への販売制限の4類型に分類し、①②の場合は③④に該当しない限り違法とはなりません。
一方で、③の場合は、「市場における有力なメーカー」がこれを行い、このような制限によって「当該商品の価格が維持されるおそれがある場合」には拘束条件付取引として違法となり、さらに、④の場合は価格が維持されるおそれがあり、原則として違法となるとしています。今回のケースはメーカーのみが対象商品を製作していますので「市場における有力なメーカー」に該当します。
そこで、契約内容について③④に該当しないように気を付けてください。
なお、行政審判を廃止する等の独占禁止法平成25年改正は平成27年4月1日施行されました。
また、平成21年改正により課徴金制度も拡充され独占禁止法違反のペナルティは大きくなりました。企業のため良かれと思いした事業活動が独占禁止法に違反しないように注意が必要です。