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2018年12月15日

交通事故~夫の運転の車両に同乗していた妻は自賠責に基づく損害賠償請求ができるか~

問い)私は車の免許をもっておらず移動は専ら夫の車です。夫が運転する車は、夫の名義で夫が購入し諸費用も夫が支払っています。先月、夫の車で移動中に夫の前方不注意で溝に転落して、助手席に乗っていた私が3ヶ月の傷害を負いました。夫は、今回事故を起こした車について、保険会社と自賠責保険契約を締結しています。この場合、妻であっても被害者として、保険会社に対して、自賠責保険金の請求ができますか。
答え)請求できる可能性が高いです。
最高裁判例(昭和47年5月30日第三小法廷判決)は、自賠法3条は、自己のため自動車を運行の用に供する者(以下「運行供用者」という。)および運転者以外の者を他人といっているのであって、被害者が運行供用者の配偶者等であるからといって、そのことだけで、かかる被害者が右にいう他人に当たらないと解すべき論拠はなく、具体的な事実関係のものとにおいて、かかる被害者が他人に当たるかどうかを判断すべきである」として、自動車を夫が所有していたこと、維持費も夫が負担していたこと、事故当時妻は運転補助行為などしていなかったこと等から、「他人」に該当すると判断しました。本件についても、同様の判断となる可能性は高いです。但し、自賠法3条が「運行供用者・運転者もしくは運転補助者」を除外している趣旨は、自動車の有する危険の実現に加担したと評価されるため損害賠償を課される点にあります。また、同居の親族間では事実上財布が同一であること、なれ合いによる詐欺的な請求の危険が大きいこと、自動車が家族の共同の利益のために利用されていることなどの問題もあります。したがって、必ずしも、他人性が認められるとは限らない点に注意が必要です。
 なお、夫の過失による自動車事故の損害賠償請求について、上記判例は原則として認めています。