2018年12月12日
交通事故における元請業者の責任
問い)私は、先日、交通事故に遭遇しました。運転者は、個人営業の貨物運送をいとなむB事業者でした。ただ、運転者の車両の所有者は、A運送業者でした。事情を調べると、AからBは、Aの車両を借り上げ、Aが指示する定期路線を走り、Aの係員などが積み荷の確認などをし、運送賃もAとBで折半する約定でありました。この場合、Aに対しても、本件交通事故の損害を賠償請求できますか。
答え)Aに本件交通事故を原因とする不法行為に基づく損害賠償請求ができる可能性があります。
AとBの関係は、請負契約ですので、原則として、Aの注文又は指図について過失が無い限り、Bが運送について第三者に加えた損害の責任をおいません(民法716条)。しかしながら、判例(最高裁昭和37・12月14日,最高裁昭和50年9月11日)は、下請会社の被用者に直接・間接指揮監督権が及んでいる場合に運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)ないし使用者責任(民法715条)の責任を肯定する傾向にあります。
「AからBは、Aの車両を借り上げ、Aが指示する定期路線を走り、Aの係員などが積み荷の確認などをし、運送賃もAとBで折半する約定でありました。」との事実関係においては、事故車の運行がAの運送の従事中であったこと、AからBへの作業指示があること、運行していた車両の所有がAであったことから、運行供用者責任ないし使用者責任を根拠として、Aに責任を問える可能性が高いです。