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2018年12月04日

成年者の承諾を欠いた認知の取り消しができるか。

(問い)
私は、昨年、成人しました。母一人子一人の生活を今まで送ってきました。成人し、就職もしたので、ようやく母を楽にさせてあげられると思った矢先に、父と名乗る人物Aが私を子として認知してきました。そして、子である以上、扶養義務があると主張してきたのです。戸籍をみるとAが父となっており、私の承諾なく、虚偽の私の承諾書を作成して届出を出していたようです。この認知を取り消し、戸籍を訂正できますか。
(答え) 
1 あなたは、Aの認知を取り消し、戸籍を訂正できます。
2 民法は、認知をした父は、その認知を取り消すことができないと定めています(民法785条)。
 他方で、人事訴訟法は、認知の取消しの訴えに関する規定(人事訴訟法2条2号)を置いています。
 この両規定の関係から、「取り消し」(民法785条)の意味について、学説上争いがあるものの、多数説は、法定の承諾(民法782条・783条)を欠いた認知行為(届出)は、承諾権者において取り消すことができると解します。この多数説を前提にすれば、人事訴訟法上の認知の取り消しの訴えは、認知される者の承諾を得なかった場合に認めらます。
 したがって、民法782条により、成年者の子の承諾がいる以上、あなたの場合は、民法782条に違反しており、「取り消し」の訴訟を提起し、その認知を取り消すことができます。
 そして、その認知の取り消しの判決(又は審判)が確定したときは、戸籍法116条の戸籍訂正申請によって訂正されます。