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2018年11月25日

損害賠償金に所得税が課税されるか

(問1)私は、交通事故に遭いました。そのため、300万円の損害賠償金を加害者から受け取りました。内訳は、慰謝料200万円、治療費50万円、自動車修理代金50万円です。又、所得補償保険に基づき給与などの補填を受けました。この場合、所得税は課税されますか。
(問2)私が事業者として私が販売している商品も運んでいました。その商品代金は50万円でした。その商品代金も損害賠償金50万円と損害賠償されました。この商品代分の損害賠償金に所得税は課税されますか。
1 問1については非課税となります。
(1) 所得税法9条1項17号の趣旨は、損害賠償金は他人の行為によって被った損害を補填するものであって、その担税力など(実際に税金を負担することができる能力など)を考慮するとこれに所得税を課すことは適当でない点にあります。
そのため、あらゆる損害賠償金を一律に対象とすることは妥当ではないことから、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるものと限定をしていますので、すべての損害賠償金が必ず非課税とならないことに注意してください。
そして、慰謝料200万円、治療費50万円、自動車修理代金50万円は、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因ですので、非課税となります。
(参照条文)
所得税法9条1項 次に掲げる所得については、所得税を課さない
所得税法9条1項17号 保険業法(平成7年法律第百五号)第2条第4項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第9項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これに類するものを含む)。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの
(2)次に、所得補償保険に基づき給与などの補填ですが、その他の政令で定めるものの第1号のその損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかったことによる給与または収益の補償に該当しますので非課税です。
(参照条文)
所得税法施行令第30条
1号 心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかったことによる給与または収益の補償として受けるものを含む。)
2 問2については課税される可能性があります。商品代金の補填は、棚卸資産の損害に対する損害賠償金ですので、収入金額に代わる性質を有するものですので、事業所得の収入金額となるからです。すなわち、所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》に該当し、所得税法施行令第30条
2号の除外事由となります。
(参照条文)
所得税法施行令第30条
2号 不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち所得税法施行令第94条《事業所得の収入金額とされる保険金等》の規定に該当するものを除く。)