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2018年10月24日

下請事業者のための下請代金支援遅延等防止法の活用

Q) 私の会社は、内装金物の製造に関して、A社の下請けをしています。A社の資本金は3億1千万円です。私の会社の資本金は1000万円に過ぎません。A社は、下請代金について契約書などの書面を一切作成しないばかりか、下請代金の支払い期日を明確に定めません。しかも、A社は、協賛金の名目で下請け代金から一定の金額を引いてきます。これらのA社の行為を是正させる法的手段はないでしょうか。
「親事業者の下請代金の減額の禁止や書面作成義務」
A)貴社のケースは(以下「本件」という。)、下請代金支援遅延等防止法(以下「下請法」という。)という法的手段が考えられます。下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で定められています(同法2条第1項ないし第8項)。A社と貴社の資本規模は、A社が3億1千万円で3億円超、貴社が1千万円で3億円以下ですので、下請法の適用要件を満たします。そして、取引内容も、内装金物製造ですので、物品の製造に該当します。よって、下請法の対象になります。この場合、A社を親事業者、貴社を下請事業者と下請法では言います。親事業者であるA社は、下請事業者である貴社に対して、契約書などの書面を作成し交付する義務(同法3条・5条)があります。また、A社は、貴社に対して、下請代金の支払期日を定める義務(同法2条の2)があります。A社が上記の義務に違反しているので、50万円以下の罰金(同法10条)の対象となります。貴社は、上記の義務違反を指摘し、間接的にA社に、契約書の作成交付や下請代金の支払日を定めることを促すことが考えられます。次に、下請法は下請代金の減額を禁止(同法4条1項3号)しています。本件では協賛金の名目で、A社が貴社の下請代金を減額していますので、同法4条1項3号に違反しています。以上から、A社は明らかに下請法に違反しています。そこで、A社を公正取引委員会に通告することをお勧めします。下請法違反が明らかな本件では、公正取引委員会は、A社に対して、報告徴収・立入検査(同法9条)を行います。次に、公正取引委員会は、A社に対して勧告(同法7条)をします。勧告は、公表されており、A社の企業イメージを低下させます。本件では、公正取引委員会の勧告によりA社の行為を是正させることが考えられます。