2018年11月01日
成年後見制度とは?
第1 成年後見制度
1 法定後見制度 ① 後見(成年被後見人・成年後見人・特に必要
な場合に成年後見監督人)
② 保佐(被保佐人・保佐人・特に必要な場合に後見監督人)
③ 補助(被補助人・補助人・特に必要な場合には補助監督人)
2 任意後見制度・・・任意後見契約 ア 本人 イ 任意後見人
ウ 必ず任意後見監督人必要
第2 成年後見とは?
1 成年後見とは、判断能力が常に欠けている状態の方の保護のための
制度
2 対象 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者(民法7条)」
3 成年後見人の役割
① 取消権 ②代理権 ③財産管理権 ④身上配慮義務
→ 成年被後見人には日常生活に関する行為を除いては、例えば、高価
な車を買う売買契約等ができなくなります。
4 成年後見人をつけるには?
(1) 「申立てのできる人」が、家庭裁判所に「成年後見人をつけてください。」と申立をします。本人の同意は不要です。
(2) 申立のできる人
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長
第2 保佐とは?
1 保佐は、判断能力が著しく不十分な方の保護・支援のための制度
2 対象 「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(民法11条)
3 保佐人の役割
① 同意見・取消権(民法13条1項所定の行為)
② 代理権(申立の範囲内で家庭裁判所が定める特定の行為について代理権を与えることができます。但し、本人の同意が必要です。また、全面的な代理権の付与はできません。)
③ 身上配慮義務
4 民法13条1項所定の行為(同意が必要な行為)
① 貸金などの元本を領収すること、これを利用すること
② 借金すること、保証すること
③ 不動産その他の重要な財産に関する権利を得ることや失うこ
と
④ 原告として訴訟行為をすること
⑤ 贈与すること、和解すること、仲裁契約すること
⑥ 相続を承認すること、相続を放棄すること、遺産分割をするこ
と
⑦ 贈与を断ること、遺贈を断ること、負担付贈与を受けること
⑧ 新築、改築、増築、大修繕をすること
⑨ 土地について5年を超える賃貸借をすること、建物について3年を超える賃貸借すること 等
5 保佐人をつけるには?
(1) 「申立てのできる人」が、家庭裁判所に「保佐人をつけてください。」と申立をします。
本人の同意は法律上不要です。ただ、成年後見と異なり、著しく不十分にすぎないので、本人の同意があった方が望ましいです。
(2) 申立のできる人
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、成年後見人、成年後見監督人、補助人、補助監督人、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長
第3 補助とは?
1 補助は、判断能力が不十分な方の保護・支援のための制度です。
2 対象 「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法第15条)」
3 補助人の役割
① 同意権・取消権・・・本人の同意の基で、上記民法13条1項各号の一部につき家庭裁判所が申立の範囲で同意権を定めます。この場合、同意を受けずに被補助人がした法律行為は取り消すことができます。
② 代理権(申立の範囲内で家庭裁判所が定める特定の行為について代理権を与えることができます。但し、本人の同意が必要です。また、全面的な代理権の付与はできません。)
③ 身上配慮義務
第4 成年後見登記制度について
1 意義
成年後見等の権限や任意後見契約の内容などを登記しておいて、そ
の内容を「登記事項証明書」で証明し、登記情報を開示する制度
→戸籍への記載は行われなくなりました。
2 制度趣旨
取引の安全とプライバシーの調和
3 登記が必要な理由
取引の安全です。
「登記されていないことの証明書」を発行することもできます。例え
ば、取引相手の能力に不安を感じた場合には、この証明書の提示を要求することによって、安心して取引ができます(取引の安全)。
4 登記事項証明書を請求できる者は?
プライバシー保護の観点から請求できる者は限定されています。
・本人・成年後見人・保佐人・補助人・成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・本院の配偶者・四親等内の親族・本人から依頼を受けた代理人(委任状が必要)・職務上必要とする公務員等
5 誰が登記するの?
① 家庭裁判所
ア 法定後見開始の審判がされたとき
イ 任意後見監督人の選任の審判がされたとき
② 公証人
任意後見契約の公正証書が作成されたとき
第5 法定後見の申立手続の流れ
① 相談
② 申立書式受領(家庭裁判所の受付・最高裁ホームページ)
③ 診断書(専用書式あり)(かかりつけ医)
④ 各種身上関係の添付書類
⑤ 相談(保佐・補助の場合は、同意権の付与・代理の付与につき相談するといいでしょう。)
⑥ 申立書作成
⑦ 申立て
⑧ 精神鑑定費用の予納(成年後見・保佐=5万円から10万円程
度)
第6 任意後見制度
1 任意後見制度は、現在、判断能力が十分な状態にある方が、将来に備えて利用する制度です。
2 任意後見契約
任意後見は、自分の選んだ人(後の任意後見人)に、後の自分の判断能力が不十分になった場合の財産管理と身上監護の事務の全部または一部について代理権を与える契約です。
3 公正証書とは?
公証人役場で公証人が法律に基づいて作成します。
4 「任意後見契約」の効力の発生時期は?
本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者の申立てによって、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することによって効力が発生します。
本人は、少なくとも「補助」の要件に該当する必要があります。
5 任意後見人の役割
任意後見契約に定められた生活・療養看護及び財産管理の事務について与えられた代理権を行使して、生活・療養看護及び財産権管理をします。同意見・取消権はありません。
6 法定後見制度と任意後見制度との関係は?
任意後見契約による保護を優先します。
ただ、一定の人の申立てにより、家庭裁判所が本人のために特に必要であると認めたときに限り、法定後見を開始します。