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2026年03月22日

交通事故~保険会社は保険金請求権者の権利を害さない範囲内に限り損害賠償請求権を代位取得する旨の定めがある自動車保険契約の人身傷害条項の被保険者である被害者に過失がある場合、損害に対して保険金を支払った保険会社(以下「人傷社」とい言います。)は、どの限度で保険金請求者の損害賠償請求に代位するか(平成24年2月20日最高裁第一小法廷判決・ウエストロー文献番号  2012WLJPCA02209002)。

1 平成24年2月20日最高裁第一小法廷判決は「本件約款中の人身傷害条項に基づき,被保険者である交通事故等の被害者が被った損害に対して保険金を支払った訴外保険会社は,上記保険金の額の限度内で,これによって塡補される損害に係る保険金請求権者の加害者に対する賠償請求権を代位取得し,その結果,訴外保険会社が代位取得する限度で,保険金請求権者は上記請求権を失い,上記請求権の額が減少することとなるところ(最高裁昭和49年(オ)第531号同50年1月31日第三小法廷判決・民集29巻1号68頁参照),訴外保険会社がいかなる範囲で保険金請求権者の上記請求権を代位取得するのかは,本件保険契約に適用される本件約款の定めるところによることとなる。」と約款の定めるところによると原則論を確認した。
2 そして、「被保険者である被害者に,交通事故の発生等につき過失がある場合において,訴外保険会社が代位取得する保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権の範囲」については、「本件約款によれば,訴外保険会社は,交通事故等により被保険者が死傷した場合においては,被保険者に過失があるときでも,その過失割合を考慮することなく算定される額の保険金を支払うものとされているのであって,上記保険金は,被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損をその過失の有無,割合にかかわらず塡補する趣旨・目的の下で支払われるものと解される。上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと,本件代位条項にいう「保険金請求権者の権利を害さない範囲」との文言は,保険金請求権者が,被保険者である被害者の過失の有無,割合にかかわらず,上記保険金の支払によって民法上認められるべき過失相殺前の損害額(以下「裁判基準損害額」という。)を確保することができるように解することが合理的である。」として、約款の趣旨目的から過失割合を考慮することなく民法上認められるべき過失相殺前の損害額=裁判基準損害額を確保することができるように「保険金請求者の権利を害さない範囲」の文言を解釈した。
 そのため、人傷社の代位の範囲は「保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」とした。
3 裁判基準損害額200万円、過失割合7:3、人傷社80万円を支払いしている場合について、過失相殺後の保険金請求者の損害賠償額は、140万円、過失相殺額60万円となる。「保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合」であることから、人身傷害保険金額+過失相殺後の損害賠償請求権額-裁判基準損害額=人傷社の代位額であるから、80万円+140万円―200万円=20万円が代位できる額となります。
4 なお、損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない自動車保険契約の人身傷害条項に基づき保険金を支払った保険会社は、「本件約款によれば,上記保険金は,被害者が被る損害の元本を塡補するものであり,損害の元本に対する遅延損害金を塡補するものではないと解される。そうであれば,上記保険金を支払った訴外保険会社は,その支払時に,上記保険金に相当する額の保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の支払請求権を代位取得するものであって,損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を代位取得するものではないというべきである。」として保険金請求権者の加害者に対する損害金元本の支払請求権を代位取得するものであって、遅延損害金の支払請求権を代位取得するものではないとされました。