2026年01月23日
マンションの区分所有者は、区分所有建物の共用部分の設置又は保存に瑕疵があることによって損害を被った場合、区分所有者建物の管理組合であり、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)3条前段所定の団体(以下「区分所有者の団体」という。)である管理組合に対し、民法717条1項本文に基づく損害賠償を求めることができますか。区分所有者の団体は「占有者」(民法717条1項)に該当しますか。
1 令和8年1月22日第一小法廷判決の結論
区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共有部分について、民法717条1項本文にいう「占有者」に当たる。
したがって、特段の事情のない限り、民法717条1項本文に基づく損害賠償請求できる。
2 理由
(1)民法717条1項本文の趣旨は、工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合、このように通常有すべき安全性を欠く状態にある工作物を支配管理して上記損害の発生を防止すべき地位にある者に損害賠償責任を負わせることにあると解される。区分所有法によると、区分所有者は、全員で、区分所有建物等の管理を行うための団体を構成し(3条前段)、区分所有建物の共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決するとされている(18条1項)。これら区分所有法の規定に照らすと、区分所有建物の共用部分については、基本的に、区分所有者の団体がこれを支配管理して通常有すべき安全性を確保していくことが予定されているものというべきである(このことは、区分所有法25条及び26条に管理者の選任及び権限等についての定めがあるからといって、左右されるものではない。)。そうすると、区分所有者の団体は、特段の事情がない限り、区分所有建物の共用部分を支配管理してその設置又は保存の瑕疵による損害の発生を防止すべき地位にあるということが
できる。
(2)区分所有者の団体は、区分所有者からその持分に応じて共用部分の管理のための費用を徴収しているのが通例であるところ(区分所有法19条参照)、共用部分の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合には、区分所有者の団体の財産からその賠償をすることが、区分所有者の通常の意思に沿い、損害を被った者の保護にも資するものといえる。
3 評価
原審は「占有者」を否定していた。この場合、共有部分を管理占有しているのは、各区分所有者となり、共有部分から被害を受けた区分所有者のみならず、他の区分所有者の法的安定性なども害されることになる。最高裁判例は上記(2)において区分所有者の通常の意思に沿うとしたことは妥当ではないか。法理論的にも上記(1)のとおり、占有者に必要な権限を法律的に付与されており、原則として管理組合が「占有者」と評価されるのは妥当であると考える。
注意)建物の区分所有等に関する法律
(区分所有者の団体)
第三条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。