2026年01月12日
遺留分侵害額の計算について教えてください。
第1 計算式(条文は民法)
遺留分侵害額=遺留分(遺留分を算定するための財産の価額・1043条)×遺留分の割合(1042条)-遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益(1046条)―未処理遺産から遺留分権利者が取得すべき遺産の総額(1046条)+遺留分権利者承継債務額(1046条)
第2 解説
1 遺留分を算定するための財産の価額
(1) 相続開始時において有した財産の価額+贈与した財産の価額‐債務(1043条1項)
(注) 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める(1043条2項)。
(2) 贈与した財産の価額における贈与は、相続開始前の1年間に限り算入する(1044条1項)。
但し、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする(1044条1項但書)。
(3) 贈与の価格は、「受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める」(1044条2項・904条準用)。
(4) 相続人に対する贈与については、相続開始前の10年間に限り算入する(1044条3項前段)。
また、その贈与の価額は、婚姻若しくは養子縁組のため又は整形の資本として受けた贈与の価額に限る(同後段)。
(5) 負担付贈与の場合の贈与の価額は、その贈与の価額から負担の価額を控除する(1045条1項)。
(6) 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす(1045条2項)。
2 遺留分侵害額(1046条)の計算
(1) 「遺留分」―「遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益(1046条2項1号)」-「未処理遺産から遺留分権利者が取得すべき遺産の総額(1046条2項2号 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額)+「遺留分権利者承継債務額」(1046条2項3号被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務の額)
(2) 遺留分権利者の遺留分侵害額を計算する場合は、10年間制限を受けることなく算入される(1046条2項は、1044条3項と異なり期間制限をしていない。)。
3 遺留分の帰属及びその割合
(1) 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1(1042条1項1号)
(2) 直系尊属以外の場合(配偶者や子がいる場合) 2分の1(1042条1項2号)
(3) 相続人が数人ある場合には、各自の相続分を乗じた割合(1042条2項)
第3 具体例
1 設問
被相続人甲の遺産は1500万円で債務500万円ある。相続人は妻A、子Bで、すべて妻Aに相続させる遺言があった。子Bは甲から20年前に300万円の贈与を受けている。この場合の子Bの遺留分侵害請求をできるか。
2 回答
(1) 遺留分を算定するための財産の価額
遺産1500万円-債務500万円=1000万円(子Bの贈与は20年前であるから
算入されない。)
(2) 遺留分
1000万円×4分の1(法定相続分2分の1×2分の1)(1042条1項2号)=
250万円(配偶者AとB2人が相続人であることから法定相続分は2分の1)
(3) 遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益(1046条)がBにある(1046条2項は10年間の制限を受けない)。
250万円-300万円=-50万円≒0
(4) したがって、Bに遺留分侵害額はないのでAに請求できない。
(注意 令和8年1月12日時点の法令によります。)