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2025年12月18日

民事執行法 第167条の17(扶養義務等に係る債権の特例)~養育費等の請求権を有する者が財産開示手続き申立てをした場合に民事執行手続のワンストップ化~(施行日令和8年4月1日)

1 民事執行法167条の17は、①財産開示手続(同条1項)、②債務者の給与債権に係る情報取得手続(同条2項)、③当該債権の差押え手続を1回の申立てにより連続的に行うことができる仕組みである。養育費等を請求する場合における民事執行の申立ての負担を軽減するためである。
2 対象となる請求権
  「第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権」は扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例の規定であり、いわゆる養育費、婚姻費用、扶養料などが含まれる(以下「養育費等の請求権」と言います)。1通の債務名義に第151条の2第1項各号以外の請求権が含まれる場合は、全部を請求債権として本条の特例を適用することができる(一問一答令和6年民法等改正129頁)。
3 債務者が開示した債権について
「開示した債権」(167条の17第1項1号)とは債権者の財産開示期日での陳述、財産目録(民事執行規則第183条)を含む(前掲128頁)。
  差押命令については、第206条1項各号に規定する給与債権に限られる。
4 債務者の給与債権に係る情報取得手続(同条2項)
  債務者が財産開示をしない場合(欠席した場合や陳述しなかった場合を含む)には執行裁判所は、市町村に給与債権に係る情報提供を命じる義務がある。そして、その結果、給与債権の情報提供された場合、その給与債権に対して差押命令の手続きに移行する(同条1項2号)。
5 条文
民事執行法第167条の17
第1項 第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者が次の各号に掲げる申立てをした場合には、当該申立てと同時に、当該各号に定める申立てをしたものとみなす。ただし、当該債権者が当該各号に掲げる申立の際に反対の意思を表示したときは、この限りではない。
 1 第197条1項の申立て 当該申立てに係る手続において債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては、当該法定代理人)が開示した債権(第206条第1項各号に規定する債権に限る。)又は次項の規定によりその情報が提供された債権に対する差押命令の申立て
 2 第206条1項の申立て 当該申立てに係る手続において同項各号に掲げる者がその情報を提供した同項各号に規定する債権に対する差押命令の申立て
 第2項 前項に規定する場合(同項第1号に掲げる申立てをした場合に限る。)において、執行裁判所の呼出しを受けた債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては、当該法定代理人)がその財産を開示しなかつたときは、債権者が別段の意思を表示した場合を除き、執行裁判所は、債務者の住所のある市町村(特別区を含む。第206条第1項第1号において同じ。)に対し、同号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。
6 民法306条3号 子の監護の費用
民事執行法193条2項により民事執行法167条の17が準用されていることから、債権者が債務者の財産について子の監護費用の先取特権(民法306条第3号)を有することを証する文書を提出して財産開示手続等の申立てをした場合に前述と同様に連続的手続きとなる。