2018年10月27日
独占禁止法~不公正な取引方法に関する基本1~
第1 不公正な取引方法の禁止及び違反した場合の制裁について
1 19条(禁止規定)
事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
2 20条(不公正な取引方法の排除措置)
前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
3 課徴金納付命令(20条の2以下)
下記第3の(1)ないし(5)までが、課徴金の対象となった。一般指定において、共同の取引拒絶など類似の規定が残るものの、その類型は、課徴金を課すほどに公正競争阻害性はないものの、規制すべき類型として、排除措置命令の対象となる点に注意。
条文の文言を良く把握しておく必要があるので、第3で条文を素読しながら、比較検討する。
第2 公正競争阻害性(実質的要件)
1 公正競争阻害性
① 自由な競争の確保
自由競争減殺=市場支配力の維持・強化の程度が競争の実質的制限のレベルに達する以前の段階
・競争回避=当該商品の価格が維持されるおそれ
・競争排除=競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見出すことができなくなるおそれ
② 競争手段の公正さの確保
ア 公正競争阻害性の判断において、競争に及ぼす影響を示す
必要が無いこと
イ 当該行為に内在する競争手段としての不公正さが問題となること
←例えば、顧客の主体的かつ合理的な選択を歪める等
③ 自由競争基盤の確保
自由競争基盤の侵害
←各類型の行為の性質などを分析し、①ないし③に該当するかどうか
を判断する。
2 ポイント
① 一定の市場の範囲=ある程度、自由競争減殺が行われている市場
② 公正競争阻害性の態様
「不当に」=個別的に公正競争阻害性が示されて初めて不公正な取引方法となる行為類型
③ 「正当な理由がないのに」=原則として公正競争阻害性が認められる行為類型(原則違法類型)
第3 不公正な取引方法の条文及び構造
1 条文構造(2条9項)
(1) 2条9項本文 「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。」(定義規定)
(2) 2条9項1号(共同の取引拒絶)
1号本文 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量を若しくは内容を制限すること
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
(3) 2条9項2号(差別対価)
不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役
務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難
にさせるおそれがあるもの
(4) 2条9項3号(不当廉売)
正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
(5) 2条9項4号(再販売価格の拘束)
自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付け、当該商品を供給すること
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること
(6) 2条9項5号(優越的地位の濫用)
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払いを遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること
(7) 2条9項6号(告示による指定・・・一般指定など)
前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと
ロ 不当な対価をもつて取引すること
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること
二 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引するこ
と
へ 自己又は自己が株式若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株式若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること
2 不公正な取引方法(一般指定)(昭和57年公正取引委員会告示第15号)
①共同の取引拒絶
正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号に掲げる行為をすること
1 ある事業者から商品若しくは役務の供給をうけることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること
2 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給をうけることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること
② その他の取引拒絶
不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること
③ 差別対価
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「法」という。)第2条第9項第2号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。
④ 取引条件等の差別的取扱い
不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱をすること
⑤ 事業者団体における差別的取扱い等
事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること
⑥ 不当廉売
法第2条9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にするおそれがあること
⑦ 不当高価購入
不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること
⑧ ぎまん的顧客誘引
自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること
⑨ 不当な利益による顧客誘引
正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること
⑩ 抱き合わせ販売等
相手方に対して、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること
⑪ 排他条件付き取引
不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること
⑫ 拘束条件付き取引
法第2条9項4号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引をすること
⑬ 取引の相手方の役員選任への不当干渉
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法2条第3項の役員をいう。以下同じ)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること
⑭ 競争者に対する取引妨害
自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害すること
⑮ 競争会社に対する内部干渉
自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること
(参考文献)
1 条解独占禁止法
2 論点体系独占禁止法
3 独占禁止法概説【第4版】
4 公正取引委員会HP
5 ケースブック独占禁止法
6 公正取引審決判例精選