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2025年12月01日

交通事故~信号機のない見通しの悪い交差点で右折をしようとした加害車(自転車)と日傘を差して走行していた被害車(自転車)が衝突した事故につき、加害車操縦者には、本件交差点右折時に、右方見通し不良のため交差点手前で徐行ないし一時停止をし、右方車両の有無、動静に注意すべき注意義務を怠り、漫然と右折をした結果、本件事故を生じさせた過失があると認められ、過失相殺も100:0とされた事例 平成20年2月29日/名古屋地方裁判所/判決/平成17年(ワ)2052号・【判例ID】28150252 以下「裁判例」と言います)~

1 過失割合
  裁判例は、原告:被告=0:100とした。
2 理由
(1)  裁判例は、「被告は、本件交差点を右折するにあたって、コンクリート壁に遮られて右方の見通しが不良であったのだから、本件交差点手前で徐行ないし一時停止をして、右方から来る車両の有無、動静に注意し、安全を確認してから右折進行すべきであったのに、これを怠り、漫然と右折をした結果、本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき、本件事故により原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。」として、被告に一時停止ないし徐行をして安全を確認してから右折する義務を負うとした。
(2)  そして、裁判例は、原告の前方不注意については、①「未だ本件交差点に差し掛かる以前であった原告には本件交差点左方の注視義務は認められない。」とした。
また、②「本件事故態様は、原告にとっては、南北道路の西側歩道上を本件交差点に向けて直進して進行していたところ、同交差点に差し掛かる以前において、突然、本件交差点の西方向(原告から見て左方向)から被告車が出現し、原告車に向けて走行してきたものであり、しかも、被告がハンドルを(被告から見て)左に転把したことにより、被告車はかえって原告車に向けて進行する結果となり、被告車の前輪が原告車の左側に衝突したものである。かかる事故態様においては、原告にとっての回避可能性はないというべきである。」(事故態様)を重視して、原告の結果回避可能性を否定した。
次に、原告が傘をさしていた点については③「原告が、両手でハンドルを把持していたとしても、また、両足底が容易に地面に着く自転車に乗車していたとしても、本件事故態様の下では、原告にとって本件事故及びこれによる損害の発生は避けられなかったものと解される。」として前記本件事故態様から、原告に過失は認められないとした。
3 参考
  本件事案は、自転車対自転車の交通事故において、急に右折してきた自転車と直進して交差点等に入ろうとしていた自転車が衝突した事故態様において参考になる。急に右折したきた自転車に対して、直進している自転車は、避けられないのが通常であるところ、常識的な判断をした裁判例であるのではないか。同様の事故態様の場合に、被害者の方は参考にされたい。