2025年11月02日
離婚後共同親権の法改正の施行日が令和8年4月1日になりました。新民法施行前に定めた親権者(単独親権)の変更を求めることは「法改正施行」のみで「事情の変更」と言えるか。
1「家庭の法と裁判」(58)の「改正家族法の要点と解説Ⅰ」(東京改正家族法研究会)によると「新民法が施行されたことのみをもっては、その事情の変更に当たるとは言い難く一旦単独親権と定められたことを前提として、その後の父母とことの関係や父と母の関係を考慮した上で、その後の事情の変更の有無等を検討する必要があると考えられる。」(家庭の法と裁判58号14頁)とし、注釈において「新民法施行前に単独親権者を定めた際には、共同親権の制度そのものが存在しなかったために、単独親権と共同親権のいずれが適切かという観点での実質的な協議ないし審理を経ていないのであるから、新民法施行によって新たな考慮要素が加わることとなり(例えば、父母間の協力関係の有無)、その結果、共同親権とする方が子の利益にかなうという積極的な事情があると基準時において認められる場合には、親権者の変更を認め得る場合があると考えられる。」(同15頁)とされていることからも、改正民法施行のみでは事情の変更は認めないとの運用になる可能性が高いと考えられる。
2 単独親権から共同親権に施行後変更することを希望する場合は、民法819条7項の本文の要件である子の利益のため離婚後の①父母と子との関係、②父と母との関係、③その他一切の事情を考慮した上で、子の利益のために共同親権にすることが適切かを判断して事情の変更を検討される可能性が高いことから、現時点での前記①から③の要件を充足するような関係性を構築できているかに留意すべきではないか。また、施行前直前に離婚し親権を定める場合は、共同親権か単独親権かについて実質的な協議をした上で単独親権としたかどうかも重要であると考える。
なお、施行後どのような運用になるか注視する必要がある。