2025年08月21日
宅地建物取引業者(以下「宅建業者」と言います)の直接取引によらず媒介契約を義務付けられる場合について!!!
Q 宅建業者が所有者から不動産を1500万円で買い取った直後にこれを2100万円で転売した場合、所有者は宅建業者に不法行為に基づく損害賠償請求ができるか。
A
1 媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を欠く場合は肯定(福岡高裁判決平成24年3月13日 ウエストロー文献2012WLJPCA03136002)
但し、損害額は媒介手数料を引いた金額 とした。
2 理由
(1) 宅建業者の義務
前記裁判例は「宅建業法46条が宅建業者による代理又は媒介における報酬について規制しているところ,これは一般大衆を保護する趣旨をも含んでおり,これを超える契約部分は無効であること(最高裁昭和44年(オ)第364号同45年2月26日第一小法廷判決・民集24巻2号104頁参照)及び被控訴人らは宅建業法31条1項により信義誠実義務を負うこと(なお,その趣旨及び目的に鑑み,同項の「取引の関係者」には,宅建業者との契約当事者のみならず,本件のように将来宅建業者との契約締結を予定する者も含まれると解するのが相当である。)からすれば,宅建業者が,その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには,当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず,媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,これを具備しない場合には,宅建業者は,売買契約による取引ではなく,媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。」として、「媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備」しない場合は、媒介契約による取引にとどめるべき義務を負うとした。
(2) 合理的根拠の判断要素
前記裁判例は、合理的根拠の判断要素として、①本件取引前の本件物件の概況等②本件取引に至る経緯③本件取引における瑕疵担保責任等④直接取引と転売との時期の近接性⑤確実性⑥安心感等を総合的に考慮して、所有者が宅建業者と直接取引する利点の有無により判断している。
3 参考
単身の親が不動産を処分したケースで、
宅建業者との間で直接取引をし損失を受けた
場合に救済の参考になる裁判例である。