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2025年08月10日

役員等の第三者に対する損害賠償責任とは?~代表取締役や取締役の個人資産に対する責任追及する手段~

1 役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人)は、その職務を行うことについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
 会社が無資力である場合などに、会社経営者の責任を追及するための手段としても利用できる。
2 条文
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第429条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第440条第3項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
3 要件
(1) ① 被告が取締役等として当該会社の任務懈怠をしたこと
② ①について被告の悪意又は重過失
③ 第三者である原告の損害の発生及び額
④ ①と③との因果関係
(2) 「損害」(③)の意義
 損害は、間接損害(取締役等の任務懈怠により会社が損害を被った結果、第三者が損害を被った場合)に限られず、取締役等の任務懈怠により直接に第三者が損害を被った場合も含む(最大判昭和44年11月26日)。
(3) 「任務懈怠」(①)の意義
 任務懈怠とは、取締役等が会社に対し法令違反を含む善管注意義務の行為をしたことをいう。
4 中小企業の場合として考慮すべきこと
取引会社が、実質的には自営業者であり、経営と個人の資産が明確に分離されていなにもかかわらず、法人格を取得しているため、紛争が生じた場合に、経営者個人の資産に対して責任を追及できないケースで、会社法429条の責任追及の可能性を検討する意義がある。