2025年06月26日
共有者の一人が相続人なくして死亡した場合、その共有者の持ち分は誰に帰属するか。
1 条文
(1)(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(2)(特別縁故者に対する相続財産の分与)(旧民法958条の3)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 争点
共有者に特別縁故者がいた場合、民法958条の2項1項が適用され、特別縁故者の相続財産分与の対象となり、その特別縁故者が共有持分を取得するのか。
3 平成元年11月24日最高裁第2小法廷判決(文献番号1989WLJPCA11240002ウエストロー)
「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法九五八条の三の規定(注:民法改正後958条の2)に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法二五五条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。」として特別縁故者が共有持分を取得するとした。
4 ポイント
内縁や事実上の養子がいる場合に、万一遺言がない場合でも、最高裁判決の結論のように民法958条の2が民法255条より優先適用されれば、共有持分も財産分与の対象となり、居住権など重要な権利を喪失するリスクが低減する。相続人がなく、かつ、遺言がない場合、特別縁故者制度の利用も検討すべきである。
但し、内縁、事実上の養子がいる場合は、遺言の作成をしておくことが重要である。