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2018年10月25日

企業法務~親族内承継のポイント~

1 親族内承継の具体的方法について
   生前贈与・死因贈与、遺言、会社法の活用
 2 基本的な注意点=①事業承継者への株式・事業用資産の集中を考え、それに伴い影
響が及ぶ、②承継者以外の譲歩相続人への配慮、を常に気にしておくこと。
 ①については、(ア)株式の集中による遺留分侵害に対する配慮、(イ)後継者の負担(旧経
営者に扶養されていた母親等の扶養など)に対する配慮、等が必要である。
②については、(ア)遺留分減殺請求権に対する配慮、(イ)事業から外れる相続人の寄与分評価、(ウ)特別受益の持ち戻しへの配慮、といったことが必要である。
 3 後継者に株式・事業用資産を集中させるにあたっての注意点
  ① 遺留分に対する配慮
ア 「事業承継は税金よりも民法がネックになる」
    遺言により後継者に全部を取得させる遺言が最も端的→遺言後は、遺留分を害さない範囲で、承継しようとする会社の株式を可能な限り多く後継者に「生前贈与」「死因贈与」の方法で移す。
    会社財産等が高く、それに比して預金が少ない場合、代償分割により、結局、後継者が財産を処分する必要が生じる。
イ 民法の遺留分に関する特例
 経営承継円滑化法(2008年10月1日施行)➡一定の要件を満たす後継者が、後継者を含
む推定相続人(遺留分権者)全員の合意(同法4条)および所定の手続(経済産業大臣の確認、
家庭裁判所の許可)を得ることを前提に、以下の「民法の遺留分に関する特例」の適用が受
けることができる。併用も可能。
 (ア) 除外特例(同条1項1号) (旧)経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継
者が、遺留分権者全員との間の「生前贈与等によって取得した自社株式を遺留分算定の基
礎財産に算入しない」との合意について家庭裁判所の許可を得ることで、遺留分の対象か
ら除外することができる。
 (イ) 固定特例(同条1項2号) 経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権者全員
との間に「生前贈与等によって取得した自社株式を遺留分算定の基礎財産に算入しない」
との合意について家庭裁判所の許可を得ることで、遺留分の対象から除外することがで
きる。・特例のポイント→後継者が手続を単独で申し立てできる。・自社株式以外のその他の財
産についても認められる。
  ② 後継者の負担
  後継者に被扶養者の扶養にあたらせるという被扶養者に配慮した遺言の文言を入れて
おく等→法的性質=負担付贈与(民法1002条)③ 後継者以外の譲歩相続人への配慮
 ア 遺留分減殺請求に対する配慮イ 事業承継から外れる相続人の寄与度評価ウ 特別受益(民法903条1項)の持ち戻しへの配慮 エ 税金
4 資本政策としての会社法の活用
①議決権制限株式の利用(会社法108条1項3号)②拒否権付種類株式(黄金株)・役員選改任権付株
式の利用③相続人の売渡請求(会社法174条)④株式譲渡制限の活用(議決権制限株式との併用)
1 従業員・外部者への承継
  ア 会社法の各手法の活用
  イ MBOの活用
    ・現代の「のれん分け」
    ・事業部門を買収(株式を取得)して経営権を取得する方法で買収者が株主として独立
    ・(旧)経営者が事業用資産を所有する場合→賃貸等の活用
    ・個人(債務)保証←(旧)経営者の間に債務の圧縮に努める。
2 M&Aの活用
事業承継の場面で、親族内、従業員・外部の者に適当な後継者を見つけ
られない場合、従業員の雇用維持、取引先の保護、あるいは、(旧)経営者の
老後の生活資金確保、といった必要性から、事業体を維持するべく、会社そ
のものを売買するというものである。