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2024年12月09日

相続財産に関する費用(民法885条)はどのような費用が含まれるか。また、注意点は?

相続財産に関する費用について民法885条(相続財産に関する費用)は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、その限りではない。」民法885条は、相続財産に関する費用負担の原則を定めているが、裁判例で認められた費用など教えて下さい。また、請求の方法などを教えて下さい。
1 相続財産に関する費用として裁判例で認められた費用
(1)相続開始後に発生した管理費用、相続財産にかされる固定資産税、地代・家賃、火災保険料、水道・下水道料金、電気料金等(大阪高決昭和41年7月1日・1966WLJPCA07010005)
「原審判は、分割すべき相続財産の総額を金三、二〇七万九三八円と評価したのであるが、そのうち原審判別紙第三目録記載の金員合計四八九万八、一六三円は、被告人久男、相手方文子および同陽一が、それぞれ相続財産である土地建物の一部を管理し、その賃借人から受領した賃料の総合計であるというのである。ところで本件記録によると、同人らが右土地建物を管理するについては、固定資産税、借地料、電気料金、水道料金、火災保険料および下水道使用料等の費用を支出していることを認めることができる。右のような費用は相続財産の管理に必要な費用であり、相続財産に関する費用として相続財産から支弁すべきものであるから、分割すべき相続財産およびその収益の額を算定するに当つては、当然右のような管理の費用を控除しなければならないものと解する。」(大阪高決昭和41年7月1日・1966WLJPCA07010005)
(2)相続財産の換価・弁済その他の生産する費用(東京地判昭和61年1月28日)「相続財産に関する費用(民法885条)とは、相続財産を管理するのに必要な費用、換価、弁済その他清算に要する費用など相続財産についてすべき一切の管理・処分などに必要な費用をいうものと解される」
2 相続財産に関する費用として裁判例で否定された費用
  相続税(大阪高等裁判所昭和58年6月20日・1983WLJPCA06200002)「相続税は前示のとおり分割確定後の相続人の取得分に応じ、各人に対し課せられるものであるから、相続に関する費用として分割の際に考慮しなければならないものではないと解される」
3 葬儀費用は裁判例上争いあり
(1) 相続人共同負担(東京高決昭和30年9月5日)
(2) 相続財産負担説(東京地判昭和59年7月12日)
(3) 喪主負担説(東京地判昭和61年1月28日)
(4) 香典等の問題があり喪主負担説が裁判例でも有力である。葬儀費用については相続人の合意のもとに拠出するのが安全である。
4 遺産分割で相続に関する費用の位置づけ
  遺産分割とは別途行使すべきとの裁判例がある(大阪高決昭和41年7月1日・1966WLJPCA07010005)
  「固定資産税の支払等相続財産の管理の費用は、その相続分に応じて共同相続人が負担すべきもの(民法二五三条参照)で、仮りに相続人の一人が他の相続人のために相続債務や相続財産の管理費用を立替え支払つたとしても、その償還請求権は遺産分割とは別途に行使すべきであり」であることから、遺産分割調停で合意が得られない場合は、別途訴訟など提起する必要があるので、そのリスクを考慮しておくべきである。