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2024年12月01日

遺言により相続分がないのものと指定され、遺留分侵害請求権を行使した相続人は、特別寄与料(民法1050条)を負担するか。

1 結論
  遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない(最高裁判所第一小法廷令和5年10月26日決定(2023WLJPCA10269003))。
2 問題の所在
  相続人が遺留分侵害額請求権を行使した場合における各相続人の負担については明文の定めはないことから、遺言により相続分がないのものと指定され、遺留分侵害請求権を行使した相続人は、特別寄与料(民法1050条)を負担するか必ずしも明らかでない。
3 理由
  最高裁判所第一小法廷は「民法1050条5項は、相続人が数人ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたものと解される。このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではないというべきである。そうすると、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である。」(最高裁判所第一小法廷令和5年10月26日決定・2023WLJPCA10269003)として否定した。
4 参考
(1) 条文
第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
(2) 特別寄与料の制度
特別寄与料とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる制度である。