2024年11月19日
相続法の基本をまとめました。
1 相続開始原因→「死亡」(民法882条)
2 相続人
(1) 相続に関する胎児の権利能力=既に生まれたものとみなす(民法886条1項)
(2) 被相続人の子は相続人(民法887条1項)→被相続人の以前にその子が死亡ないし民法891条該当の場合、その子の子が相続人(代襲相続)(民法887条2項)。
(3) 子が居ない場合の相続人(民法889条)
①被相続人の直系尊属②被相続人の兄弟姉妹③被相続人の兄弟姉妹の子
(4) 配偶者は常に相続人となる(民法890条)
3 相続の効力
(1) 相続の開始の時から、一切の権利義務を承継(民法896条)→負債も承継することに注意。
(2) 祭祀に関する権利の承継(民法897条)→民法896条にかかわらず「習慣」等により決める。
(3) 共同相続の効力→「共有」(民法898条)
(4) 法定相続分(900条)
① 子:配偶者=1:1
② 直系尊属:配偶者=1/3:2/3
③ 兄弟姉妹:配偶者=1/4:3/4
④ 同順位者は頭割り。
(5) 具体的相続分の算定(基礎)
①(相続開始時の相続財産の価額)+(特別受益とみられる贈与の価額)=(みなし相続財産)
②(みなし相続財産)×(各自の法定相続分または指定相続分)=(一般の具体的相続分額)
③(一般の具体的相続分)-(特別受益の贈与または遺贈の額)=(特別受益者の具体的相続分額)
(6) 具体的相続分の修正(寄与分)
ア 寄与分の要件→相続人に限られる。
イ 寄与の態様→①労務の提供又は財産上の給付②療養看護等
ウ 被相続人の財産の増加・維持
エ 算定基準(民法904条の2)→一切の事由を考慮
オ 遺留分の関係→規定がなく考慮されない。
カ 具体的な計算
①(相続開始時の相続財産の価額)-(寄与額)=(みなし相続財産額)
②(みなし相続財産額)×(各自の法定相続分)=(一般の具体的相続分額)
③(一般の具体的相続分額)+(寄与額)=(寄与者の具体的相続分額)
※配偶者の寄与分(民法1050条)
1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2項 前項の規定による特別寄与料の支払について,当事者間に協議が調 わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者は,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき,又は相続開始の時から一年を経過したときは,この限りでない。
3項 前項本文の場合には,家庭裁判所は,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与料の額を定める。
4項 特別寄与料の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の 価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5項 相続人が数人ある場合には,各相続人は,特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
(7) 相続放棄(民法938条)
4 遺産分割
(1) 共同相続における遺産の共有関係を解消し、単独所有に還元する点に意義がある。
(2) 方法
① 現物分割 ② 換価分割 ③ 代償分割
(3) 遺産分割の流れ
ア 協議→調停→審判
イ①相続人の範囲及び相続分の確定→②遺産の範囲の確定→③遺産の評価→④特別受益者とその額の確定→⑤寄与相続人と寄与分の確定→⑥特別受益及び寄与分を踏まえた、相続開始時における具体的な相続分額の算出→⑦具体的相続分額の割合に基づく、遺産分割時における遺産分割取得額の算出→⑧具体的な遺産分割の決定
(4) 遺産分割の効果
ア 分割の遡及効
イ 第三者の権利保護
ウ 共同相続人の担保責任
5 遺言
(1) 意義
遺言は人の最終の意思表示について、その者の死後に効力を所持させる制度であり、例えば、遺言による相続分の指定(民法902条)等することができる。
(2)遺言能力
ア 15歳以上(民法961条)
イ 成年被後見人の遺言(民法973条)
事理弁識能力の一時回復+医師2人以上の立会+医師において遺言能力ありとの遺言書に附記
(3) 遺言の方式
ア 普通方式
(ア) 自筆証書遺言(民法968条)
(イ) 公正遺言証書(民法969条)
(ウ)秘密遺言証書(民法970条)
イ 特別方式
(ア) 危急時遺言
①死亡危急時遺言(民法976条)
②難船時遺言(民法979条)
(イ) 隔絶地遺言
①伝染病隔離時遺言(民法977条)
②在船時遺言(民法978条)
ウ 自筆証書遺言(民法968条)
1項 (ポイント)全文+日付+氏名を自署すること、押印すること。
2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書に因らない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。←一部緩和されました。
エ 公正遺言証書(民法969条)
→公証人に作成して貰う遺言
①証人2人以上立会②遺言者が遺言の趣旨を口授③公証人が筆記し遺言者に読み聞かせ④遺言者・証人において遺言が正確であることを承認した後、署名押印。⑤公証人附記
オ 秘密遺言証書(民法970条)
→自筆遺言と同じく私文書の上に書かれるが、公証人に遺言書として公証してもらう遺言
ただし、署名押印以外は、自署が不要な点が自筆遺言と異なる。
(4) 遺言の撤回
ア 遺言者は、いつでも方式に従って遺言を撤回できる(民法1022
条)。
イ 抵触行為による撤回(民法1023条)
ウ 非復活主義(民法1025条)
(5)遺言の無効
ア 遺言の方式違背(民法960条)
イ 遺言能力がない場合(民法961条)
ウ 共同遺言の場合(民法975条)
エ 利害相反(民法966条1項)
オ その他、錯誤、公序良俗違反
(6)遺言の解釈→遺言者の真意を探求すること(判例)
(7)遺贈
遺贈とは、遺言によって無償で財産的利益を他人に与える行為
⇔死因贈与
(8)配偶者居住権
ア 配偶者短期居住権(民法1037条)
「配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。」
イ 配偶者居住権(民法1028条)
「1 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。」
(9)遺留分侵害額請求権(1042条など)
・法定相続分の2分の1の限度で保障
・時効は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年」(民法1048条1項)です。除斥期間は相続開始のときから10年間です。
・兄弟姉妹に遺留分侵害額請求権はない。