2024年11月01日
令和6年11月1日フリーランス新法が施行されました。
私は、建設会社から住宅建設の業務の一部を受託する1人親方をしています。建設会社から、昨日、突然資材高騰を理由に、継続的に受けていた報酬を今月は半分にするとの連絡がありました。私が抗議しましたら、建設会社からは、契約書の作成もなく、明示的な報酬の合意もないことから、問題ないとの回答でした。どのように対応すべきでしょうか。
1 結論
報酬を仕事の対価として継続的に受けていたことから、建設会社との間で報酬額について黙示の合意が認められる。1人親方と建設会社には特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」と言います)が適用されることから、1人親方の責めに帰すべき事由でない資材高騰を理由に報酬を減ずることは禁止されます(同法5条1項2号)。したがって、本件では、報酬全額を請求出来ます。
2 解説
(1)建設会社から住宅建設の業務の一部を受託することは、フリーランス法2条4項2号に該当します。また、1人親方は、「特定受託事業者」(フリーランス法2条1項)に該当します。
したがって、フリーランス法が適用されます。
そして、報酬額に関する条項は、フリーランス法における取引条件明示義務の内容に含まれます(同法3条1項)。
そこで、対応としては、まずフリーランス法に基づく契約書の作成、特に報酬額の明示を要求することが考えられます。この要求に建設会社が従わない場合は、公正取引委員会又は中小企業庁長官に対する申出(同法6条1項)を検討する余地があります。
(2)次に、報酬の明示が無い場合でも、特定受託事業者と建設会社(特定委託事業者)との間の業務委託契約は、原則として有償契約(民法632条、商法512条)であり、継続的に報酬を受けていたことを考慮すると、報酬について黙示の合意があったと考えられます。
したがって、フリーランス法5条1項2号から、1人親方の責めに帰すべき事由がない本件においては、報酬額の減額が禁止されますので、1人親方は建設会社に対して全額報酬を請求出来ます。
(3) 令和6年11月1日から、フリーランス(特定受託事業者)に対して、業務委託事業者は、報酬などを含めて一定の取引条件明示義務があり、原則として、直ちに書面又は電磁的方法により、明示する義務(同法3条)があります。仮に業務委託事業者が、契約書などで取引条件明示をしない場合は、フリーランスとして要求しましょう。他方、業務委託事業者は、フリーランス法に留意して契約などを締結する必要があります。
私が、相談を受けたケースでは、1人親方に契約書などを作成しているケースはあまりなく、契約書などを作成する慣行でもなかったことから要求できなかったと言っていた相談者様もおられましたので、重要な法律が施行されたと思います。